マレット
～丸みを帯びたフォルムの光～

“マレット Mallet”とは英語で木槌（きづち）や打楽器を演奏する際に用いるヘッドのついた枹（ばち） のことを意味します。シルバーや10金の丸い板を、金槌や木槌を使って叩きながら成型し、手作業で一つ一つ槌目模様のテクスチャーをつけています。このテクニックのルーツは、アンティークの銀食器（特にスプーンやティーポットなど）に使用されていた、金属を叩いて成型する技術にあります。

今から20年程前、アンティークジュエリー買い付けのために、イギリスのアンティークマーケットやフェアを回っていた時のことです。ジュエリーコーナーの隣に並んでいる、アンティーク銀食器の丸みを帯びたフォルムに光る槌目模様がとても美しく、その細工の美しさに魅せられ、いつかその美しさを表現したいと思うようになりました。

それから随分と時を経たある日、アンティーク食器の本を眺めていたのですが、買い付けの思い出と共にその美しさが想起され、このコレクションを製作しようと決めました。目指したのはやさしい槌目模様、トントンと金属の丸みを感じながら、強く優しく叩きました。このコレクションが、打楽器の美しい音色の様に、お客様の心に響きますようにと思いながら。